「せめてもっと優しい言い方してくれてもいいんじゃないですか!」

「あ?なに言ってんだよ。俺が『ちょっと内容がわかりづらいから、まとめてくれないかな。あと字もかわいいんだけど……もっと読みやすく書いてほしいかな、なんて』とか言い出したらどうすんだよ」

「そ、それはそれで……怖いです」

「だろ?」



内海さんは『口が悪いのが俺自身だ』とでもいうかのように開き直る。

確かに内海さんが広瀬先輩みたいな話し方で笑顔なんてみせていたら……絶対なにか企んでいるとしか思えない。

丸め込まれてしまう私に、内海さんは「わかったらさっさといけ」と手で払った。



確かにきつい言い方で口が悪いのが内海さん、だけどさ。でも……もうちょっと優しい言い方してくれてもいいと思う!
なにも部下のやる気を削ぐような言い方しなくても!



「っ〜……くそっ!頑張ってやるー!」



悔しさに手元の書類をぐしゃっと丸め、私はカツカツとフロアへ戻った。



きつい言い方は悔しい。だけど前ほど『嫌な人』だとは思わない。

優しさを知っている私には、その口の悪さも、優しさと同じ彼のひとつ。全てがあって、内海さんなのだと思うから。