「はぁ……」
内海さんと話をしていると、広瀬先輩は電話を終えたらしく溜息をつきながら戻ってきた。
苛立ったように髪をかく仕草から、やはり電話の相手は彼女さんで、内容的に上手くいかなかったのだろう。
「あれ、内海もいたんだ」
「おう。なに、お前彼女と別れそうなんだって?」
「あー……はは、うん、まぁ」
遠慮なしに聞く内海さんの言い方に少しヒヤリとしてしまう。
「で、電話彼女さんだったんですか?」
「うん。もうすっごい怒っててさ、『もう別れる。これから結婚式もキャンセルしてくる』って」
「えぇ!?」
キャンセル!?
予想以上に大事となっている状況に、こちらのほうが驚いてしまう。
「あーもう……ここまできて、別れるしかないのかな」
先輩がこぼした、小さな弱音。
別れるしかない?どうして?なんでそんな簡単に言うの?
泣いた私の気持ちも、傷つけまいとしてくれた内海さんの気持ちも、なにひとつ知らないで。
それらの感情に、頭の中でなにかがぷつんと音を立てた。
「彼女さんが別れるって言ったから、別れるんですか?」
「え?」
「広瀬先輩自身は、どう想って、どうしたいんですか?」
その茶色い瞳をじっと見つめて言うと、静かな廊下に私の声がただ響き渡る。



