ビター・スウィート




彼女さんと喧嘩、か……。

彼女さん、相当怒ってるんだろうなぁ。けど、広瀬先輩もそこで謝るってわけじゃなくて怒ったりもするんだ。



怒るのはきっと、自分の気持ちも分かってほしいと願うから。広瀬先輩が、自分自身を見せている証拠。

そこがまた、彼女さんと私の立場の違いなのだと感じる。



「チャンスじゃねーか」

「え?」



突然の一言に後ろを振り向けば、そこにいたのは話を聞いていたのか内海さんだった。

彼はズボンのポケットに手を入れたままこちらへ近づいてくる。



「チャンス……?」

「広瀬、彼女と喧嘩してるんだろ?なら上手いこと言って別れさせて、奪えばいいだろ」

「うっ奪う!?」



な、なんて下衆な……!

昨日あんなに優しくしてくれた人の発言とは思えない!いや、内海さんらしいといえばらしいけど!



「そうすればお前も広瀬も幸せで、ハッピーエンド。そもそもお前は、あいつに気持ち伝えることもしてないだろ」

「あ……」



彼の言葉に、ふと気付く。

言われてみれば、そうだ。私、広瀬先輩に自分の気持ちひとつも伝えていない。



叶わないから、結婚するから。それで終わってしまって、私は前に進めるの?

ううん、きっと無理。進めないよ終わらないよ。なら、私がしなきゃいけないことはなんだろう。

今の彼につけこむこと?上手いことを言って、奪うこと?

ううん、違う。素直に自分の気持ちを、伝えること。