「きー!もう聞いてよ菜穂ちゃん!」
遅い昼食を終えフロアへ戻ると、そこにいたのは明るい茶髪を巻き、濃い目の化粧をしたギャルっぽい見た目の一つ年下の後輩・菜穂ちゃん。
私と同じ制服姿にも関わらず、すらりとしたスタイルのせいか、全く違うものに見える。
ぽってりとした唇をピンクのグロスで光らせる彼女に私はうぅ〜と泣きついた。
「何ですかぁ?また広瀬さんの話ですかぁ〜?本当、ちー先輩って広瀬先輩のこと好きですよねぇ」
気怠そうに語尾を伸ばして話すのは元々の菜穂ちゃんの話し方で、決して会話を面倒くさがっているわけでもバカにしているわけでもない。
その証拠に、泣きつく私のボブヘアの頭を菜穂ちゃんはよしよしと撫でて慰めてくれる。
「違うの!あ、いや、広瀬先輩は好きだけど……広瀬先輩の話じゃなくて、あの悪魔の話!」
「悪魔……あ〜、内海さんのことですかぁ?また怒鳴りつけられたんですかぁ?」
「怒鳴りつけられるほうがどんなにマシか……」
くっ、と悔しさに唇を噛むと、彼女はつけまつげのついた大きな目をバサバサと瞬かせた。



