ビター・スウィート




視界が、涙で滲む。

不安定によろける足元、でも今は逃げるように駅に駆け込むしかない。



……くるしい。心が痛い。

ずっと好きだった人に彼女がいたこと。結婚して、子供も生まれるということ。

私は何ひとつ知らなくて、そもそもこの想いは叶うわけなんてなかったこと。



だから彼は『諦めろ』、そう言っていたんだ。だけど、知っていたのなら言ってほしかった。

本当のことを言ったら、私のやる気がなくなると思われていた?
惨めだと笑われていた?バカにされていた?綺麗事を言っていると思われていた?



考えれば考えるほど、涙が止まらない。

ねぇ、どうしてだろう。広瀬先輩のことで落ち込んでいるのに、頭のなかには内海さんのことばかりが浮かぶよ。

なんで?どうして?



「っ……、くるし……」



呼吸すらもままならないほど苦しいのは、走ったせいか、涙のせいか。

それとも、彼への切なさのせいか。