「なっなんでそんな言い方するんですか!ひどい!」
「事実だろ」
「かもしれないですけど……もっと言い方ってものがあるじゃないですか!」
「はぁ?」
そんな私にジロリと睨みながらビシッと向けられた箸の先。
「そもそも俺はな、お前みたいに男目当ての不純な動機で仕事するバカ女が大っ嫌いなんだよ。どうせ日頃の仕事の出来も、広瀬に左右されてるんだろ?アホ臭い」
「うっ……」
そ、それもバレている……!
「どうせ無理なんだからさっさと諦めて仕事に力入れろ。ヒヨッコが」
「なっ……!」
「ちーお待たせ……ってどうかした?」
私が反論しようとしたところで背後からやってきた広瀬先輩は、両手にトレーを持ち何も知らず首を傾げる。
にこやかに笑う彼の前でそれ以上言えるわけもなく……。
「っ……お水持ってきます!」
「うん、ありがとー」
「おい永井、俺のも」
「はいはい!」
言葉を飲み込み、水を言い訳に席を立った。
なんて失礼な男……!
確かに異性としては見られていないし、仕事の動機は不純だし、左右されてるし、間違いではないけれど……そんな言い方しなくてもいいじゃんか!
嫌な奴!やっぱり悪魔!内海さんは悪魔!!!
……そう思う反面、わかっている。何年一緒にいても、異性としては見られていないこと。
『娘みたいなものだよ』
わかっていても、その間柄ですらも大切にしたいんだもん。傍にいたいんだもん。
なのに、そんな分かり切ってることをわざわざ言わなくてもいいじゃんか。
意地の悪いその言葉を思い出し、胸がチクリと痛んだ。



