「じゃあすみません、お邪魔しました。ごちそうさまでした」
「いいえ、どういたしまして」
そして急ぎ足で玄関に向かおうとする私に、見送る広瀬先輩。そしてなぜか、同じように玄関についてくる内海さんは私より先に靴を履く。
「内海さん?」
「コンビニ行くついでに駅まで送る」
「えっ……大丈夫なんですか?」
「一眠りしたからな」
酔い覚ましも兼ねて、外へ出る内海さんに続くように、私は先輩へ礼をすると外へ出た。
アパートや家の並ぶ駅前通りは、もう車の通りも少なく静かだ。そんな中、私と内海さんはふたりで細い夜道を歩く。
言葉なく行く道の中、梅雨が明けようとしている頃の夜は、涼しい風が小さく吹いた。
「……起きるタイミング、良すぎです」
そんな無言を打ち破るようにぼそ、と呟いた私に、内海さんはポケットに手を入れたまま私の一歩前を行く。
「邪魔しないようにしてやったんだろ。感謝しろ」
その言い方から、やっぱり会話の途中で起きていた彼は寝たふりをしていたのだろう。あまりにも起きるタイミングがちょうどいいと思った。
つまり、あの話も全て聞いていたわけだ。
それらのことに、込み上げてくる気持ちは。



