「……広瀬先輩、おめでとうございます。じゃあ今度、奥さんも一緒にご飯行きましょうね」
「うん、彼女にも伝えておくよ」
「広瀬先輩たちのお祝いですから、その時はご馳走しちゃいます!」
あはは、と笑う私に、広瀬先輩はにこりと笑った。
私、ちゃんと笑えているかな。変な顔、していないかな。
『おめでとう』、なんて心にもない言葉を、きちんと笑顔で言えている?
「……ん……、」
「あ、内海。起きた?」
すると、それまで寝ていた内海さんはそっと目を覚まし、もぞ、と起きる。
「あー……気持ち悪い」
「大丈夫?水飲む?」
「おー……つーか永井、お前終電は?」
「え?あっ!まずい!」
すっかり忘れていた時間に、壁にかけられた時計を見れば時刻はもう二十三時だ。明日も仕事があることを思うと、そろそろ帰らないと。
「すみません広瀬先輩、私帰りますね!あっ、片付け……」
「ううん、いいよ。明日内海とやるから」
「大丈夫」と言ってくれる彼に、からになったグラスと皿の並ぶテーブルを申し訳ないけれどそのままに、私は自分の茶色いハンドバッグを手にとった。



