ビター・スウィート




「あの、広瀬先輩……」

「あ、そうだ。ちーには直接言おうと思って、まだ言ってなかったんだけどさ」

「え?」



するとその言葉を遮り、広瀬先輩は笑顔のまま言う。



「俺、結婚するんだ」

「……え……?」



その、たった一言に時間が止まった気がした。



結婚、?

広瀬先輩が、誰と?……え?



驚きより、ただ呆然とする頭は思考がついていかない。



「彼女とは二年くらい付き合ってたんだけど、実は……子供が出来て。だから急遽なんだけど、来月簡単な式だけでもあげる予定で」



『結婚』『子供』、嬉しそうに、恥ずかしそうに彼は言う。



二年くらい付き合っていた?

そんなの、全然知らなかった。好きな人のことなのに。なにも知らなかった。



「ちーのこともよく話ししててね、彼女も一度会ってみたいって言ってて」



なに それ。

耳を塞ぎたくなる衝動を抑え、震えだす手を膝の上でぎゅっと握った。



「そう、なんですか……」

「なんか改めて報告とか、照れるね。ちーにはなんだか恥ずかしくて、彼女の話も出来なかったから」



絞り出した一言に、広瀬先輩はなにも気付かず恥ずかしそうに笑う。