ビター・スウィート




「でも本当、ちーが内海と仲良くなっててよかった」

「え?」

「前までどちらかというと、内海は怒るばっかりで、ちーも内海に怯えてて、仲良くはなれない感じだったからさ」



言われてみれば、前まで内海さんは私の中で『悪魔』という印象しかなくて、怖い、厳しい、嫌な人としか思えなかった。

けど、いつからだろう。その優しさを知って、いつしか悪魔だなんて呼べなくなった。

怖い時も確かにあるけど、それ以上に時々の優しさと笑顔に、嬉しいと思える。



「昔からちーはちょっと人見知りっていうか、打ち解けるまで距離が出来ちゃうタイプだったからさ。正直『地元離れてこっちに就職する』って聞いたときは、ちょっと心配だったんだよね」

「あ……まぁ、こっちで友達出来るまでは確かに、心細かったです」

「だよね。だから俺は余計ちーをほっとけなかったんだけど、でもちーも子供じゃないもんね。自分で友達や信頼出来る人と距離を縮められるんだよなって、少し感動した」



笑いながら言う彼の言葉から伝わってくるのは、私に対して思ってくれている気持ち。

確かに、仕事にも慣れて、いつの間にか友達も後輩もできて、心細さも消えていた。

だけど、その不安も構わないくらいの思いで地元を出てくることが出来たのは、あなたがいたからなんだよ。

広瀬先輩がいたから、私は今ここにいられるんだよ。



伝えたい。言えずにいる気持ち。

『ありがとう』の気持ちと、『好き』の一言。