ビター・スウィート




「ちーの分も一緒に運ぶから」、と席に着くよう言ってくれる彼に甘え、私は内海さんとともに部屋の壁際にある四人掛けのテーブル席に座った。

私が壁際に座ると、彼は少し距離を置くように向かって斜め前の席に座る。



テーブルに置かれた彼のA定食は、出来たてのカツ丼とざる蕎麦、とメニュー表の写真で見る以上になかなかボリュームがあり、見ただけでおなかいっぱいになってしまいそうだ。



「前から思ってたけど、やっぱりあいつお前に甘いよな」



すると突然ぼそ、と呟かれたのは嫌味のようなただの本音のような言葉。



「甘いって言い方やめてください。優しいんです、内海さんと違って」

「へー……で、そんな優しい広瀬先輩のことが好きなんです、ってか?」

「え!?」



嫌味っぽく返したものの予想外の一言で返され、驚き声をあげる私に内海さんは『バレバレだから』とでも言うように、しれっとした顔で割り箸を手にとった。



ば、バレていたなんて……しかもよりによってこの悪魔に。

けどそれを弱味にさせてたまるか。そう思い、動揺を隠すように普通の顔を繕ってみせる。



「大学からのよしみだっけか」

「は、はい。大学の頃から広瀬先輩は優しかったですから!好きになっても当然……」

「でも今だに付き合えそうな気配は全くないんだろ?ってことはそういう目では見て貰えてないってことだ。諦めろ」

「えぇ!?」



ひ、ひどい!ひどすぎる!

いきなりバッサリと斬るように言われた一言に、普通の顔など出来るわけなく大きな声をあげた。