「あの、広瀬先輩……」
「あ、トイレとかはここだから自由に使って。内海ー、ちー来たよ」
「へ?」
問うより先にぽろっとこぼされた『内海』の名前。
それと同時にガチャッと開けた、茶色いドアの向こう。広がるキッチンとリビングには、フライパン片手にキッチンに立つ彼……内海さんがいた。
「う、内海さん!?」
「あ?なんだよ、遅ぇな。十九時って言ったらその時間に来るのが当たり前だろ」
「す、すみません……じゃなくて!なんで内海さんがここに!?そしてなぜフライパン!?料理!?料理するんですか!?」
しれっと言う内海さんに驚きを隠せない。なぜなら、こちらをジロリと見る内海さんはワイシャツの袖をまくり、恐らく自前と思われる黒のエプロンをして、フライパンの上のチキンライスを炒めているのだから。
「内海、器用だから料理も得意なんだよねぇ」
「そ、そうなんですか……」
でもエプロン姿なんて意外すぎる……っていうか、今日内海さんいたの!?
いや、まぁ前のデートの一件もあったし、もしかしたらそうかも、なんて予想もしたけど、考えないようにしていたのに……。
そうだよね、考えてみればふたりきりで家なんてないよね。納得しながらも少しは期待していただけに悲しくなってしまう。



