A定食はカツ丼とお蕎麦のセットかぁ。B定食だとおかずがミックスフライだし、私の好きなエビフライも入っているからB定食にしようかな。あ、でもカキフライ食べられないや。
でもC定食だとコロッケとサラダだからエビフライはついていないし……。
「ちーは何にする?」
「えーと、エビフライが食べたいからB定食にしようかと思ったんですけど、カキフライは食べられないからやっぱりC定食にしようか悩んでて」
「あー、そういえばちーエビフライ好きだもんね」
昼食ひとつにもこうして悩む私に、広瀬先輩は嫌な顔をせず微笑む。
「じゃあ俺がB定食にするから、ちーはC定食にしなよ。それでおかず交換しよ」
「いいんですか?」
「うん、俺カキフライ好きだから」
や、優しい……!
笑顔で決めて注文をする広瀬先輩に、心はきゅーんと音をたてる。
はっと気付き横を見ると、先に出来上がったA定食のトレーを持ち、そんな私たちを冷ややかな目で見る内海さんがいた。
「な、何ですかその目は……」
「……甘やかしすぎだろ。ガキじゃあるまいし」
その目が言いたいのは『好き嫌い言わずに食わせろ』といった気持ちらしく、「うっ」と黙る私に、広瀬先輩は背後で笑う。
「あはは、ちーは娘みたいなものだから」
「それを言うなら妹だろ」
「そうとも言うけど……あ、内海先に席行ってていいよ。ちーも」



