ビター・スウィート






俺が気付いた時には、いつだってその視線は広瀬のほうを向いていた。

好きなんだろう、そう知って、『無駄だ』と言った俺にそいつは泣いた。

けれど、泣こうと落ち込もうとめげないのが永井だ。そのひたむきさと時折見せる笑顔が、俺の視線を奪うのが、少しムカつく。





「……あ」

「あれ?内海さん」



言いようのない気持ちを抱えたり、いきなり腕を掴んでしまったり、としたことから抱く永井に対する気まずい気持ち。

にも関わらず、仕事を終え雨の中やってきた駅で、自宅に向かう線のホームへと出るとそこにいたのは、なんと永井。

なんであんまり顔を見たくない時に限って会ってしまうのか。まぁ、偶然なんてそんなものなのだろう。



「珍しいですね、いつもだったら残業してるのに」

「俺だってたまには早く帰る日もある。お前こそ珍しいな、家こっち方面じゃないだろ」

「はい。今日はこの後菜穂ちゃんの家でみんなで女子会するので!」



そういえば今日は金曜だったか。土曜とはいえ俺は明日も仕事で、そもそも休み前に呑みに行くという習慣がないせいか、すっかり忘れていた。



「女子会、ねぇ」

「内海さんはみんなで呑み会とかしないん……あ、そっか。呑めないんでしたっけ」

「うるせーな。それ他の奴に言ったら左遷するからな」

「職権乱用ですか!?」



チッ、と舌打ちをするとそこにちょうどやってきた電車。運良く空いていた車内に乗り込むと、俺と永井はドア近くの席に自然と肩を並べて座った。