アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】

 一日目は何事もなく、過ぎて行く。

皆苦労してきた人達ばかりで新入生の扱いはわきまえているようだ。


でも、ことは二日目に起きた。
僕の配給された食事を取り上げられたのだった。


「お前はこの前まで単身房に入っていたから栄養は足りてる。鉄管ビールで充分だ」


「テッカンビール!?」


「何だお前鉄管ビールも知らないのか? 後でトイレの時に教えてやるよ」


(トイレ!? ってことは……、えっ、あれか?)


「うぇー」
僕は吐き気を覚えた。


「止めろ!!」

慌てて僕の容器を差し出されたが遅かった。

空の皿の中に胃液を吐き出していたのだ。


そう、空腹な僕の胃の中には何も残っていなかったのだった。


僕はこともあろうに、施設始まって以来の問題児と同室になってしまったのだった。


万引きや親父狩りなどを平気でやっても反省の態度さえ見せない最強の悪だと言われている少年だったのだ。




 トイレは時間制で、トイレットペーパーは無くちり紙が配給される。

僕は引き摺られて無理矢理トイレに連れて行かれた。


其処で味わったテッカンビールはただの水道水だったのだ。


「えっ、テッカンビールって」


「ただの水道の水だよ。鉄管を通ってくるから鉄管ビールだ」


「ビール……って、泡立つからてっきり……」

僕はビールの泡からある物を想像していた。
だから抵抗したのだった。




 それでもそれはやはり地獄だった。

夜中に尿意を感じたのだ。

トイレ時間制……
だから必死に我慢した。


だけど限界だった。


僕は寄宿房のドアを叩いていたのだった。