苦しい……
息が苦しい……


(何なんだ。何故息が出来ないんだ?)

僕は必死にもがいて、やっと普段通りの呼吸を回復する。


この夢をもう何度見ただろう。

又、あの石の夢の前だった。


彼処は何処?

どうしてあんなに息が出来ないの?


僕は夢の中で自分に説いていた。




 ……ブォーッ!!

突然大きな音がした。


……ガバッ。


僕はたまらず飛び起きた。


アレハイッタイナンノオトダ……
解らない。




 もう何ヵ月この夢を見る?


鬱蒼とした雑木林だったり、川の石だったり……

決まって息が出来ない。
あれは一体何処なんだ……

もし、本当に荒川だとしたら……
何故彼女に逢えないのだろうか?


夢の中だったら、夢の中ならなおのこと見せてくれてもいいのに……
会わせてくれてもいいのに。




 ふと周りを見渡す。
頭が朦朧として、此処が何処なのか一瞬解らなかった。


本当は少年院だと解っていながら、違ったらいいなと思ってしまうのだ。
それだけ、その響きが怖いのだ。




 僕は何故あの夢ばかり見るのだろう?
母を殺してしまった償いなのか?
それとも、あの場所で遊んだ彼女を思い出すためなのだろうか?


でも今彼女に会うことは出来ない。
少年院に送致されたことを知られなくないんだ。
僕が本当の母を、彼女と遊んだあの川の石で殺害してしまったことを知られなくないんだ。


確か母には僕から言った記憶がある。
上長瀞の駅から歩いて行ける川原で遊んだことを……
だから母は、思い出作りのために僕を彼処へ連れて行ってくれたんだ。


そんな母の行為を僕はむにしたのだ。
その事実を知られなくないんだ。