体育祭の翌週。
父には内緒にして、三峰口の駅からSLに乗るために出発した。

父に言うと又悪戯されるからだ。

本当に父は、私達母娘を不愉快にさせる名人だったから。


何故三峰口かと言うと……
熊谷駅十時十分発車のSLには、間に合うはずがなかったからだった。


でも、終点熊谷駅までは乗るつもりだった。


JR高崎線の改札口近くで驚いた。
群馬でSLに乗ろうと言うポスターが貼ってあったからだった。


私達は、顔を見合わせた。


「秩父線ではとっくにSLは走っているわよねー」

母はそう言いながら笑っていた。




 私達は父がパチンコに出掛けた後に出発した。

これで夜十時までは帰って来ない。

そう……
それが何時ものパターンだった。

結婚記念日でも、誕生日でも、母が肺炎で苦しんでいても、私が病気になったとしても……
父は遊んでくる。

煩わされたくないからだ。


でもあのRDイベントのように……


『何時位に帰れるから』

などと言って出掛けると、必ずその時間より早く帰宅してイチャモンを付ける。


このような最低最悪の父には、何も言わないで外出する。

これがベストだったのだ。