「おいおい事情聴取か? ってことは、さては俺に惚れたかな? あっ、冗談冗談。それより佐々木。なあー、本当に初対面か?」


「まだ言ってるよ」
私は軽くあしらったつもりだった。


でも本当は初対面ではなかったのだ。

それが発覚するのには、時間はまだまだ費やすことになる。


水野先生は小学校の教育実習は既に終了していると言った。

直ぐに中学に研修に行きたかったけど、許可が下りずにこの高校へやって来たとのことだった。


高校の資格だけなら、二週間。
中学の資格も一緒に取ろうすると三週間かかる。

この、短いようで長い期間が私の一生を変えることになるなんて……

全く知らずに……
このイケメン教育実習生を眺めていた。




 全校集会の後、教室に入ってホームルームの始まるのを期待して待っていた。

水野先生がもしかしたら来てくれるかも知れないと思ったからだ。


勿論、朝会で発表されたはず。
でも余りにもイケメンだったので、外野が五月蠅くて聞き損ねたのだ。
ちと言ったか、んと言ったか判んない。
一か三か?
最後の年生しか聞こえなかったんだ。


でも、水野先生は担任と入って来なかった。


「えっー、先生一人?」

誰かがそんなことを言い出した。


(えっ!?
やっぱり一年生の研修?)


聞き間違いではなかったようだ。

でも喜んだのもつかの間だった。

水野先生は、三年生のクラスで研修することになっていたのだった。


「お前ら、そんなにあいつが……」


「うん。格好いいと思ってる」
担任の言葉を遮断するように、殆どのクラスメートが言っていた。


「彼奴は駄目だ。ライバルが多過ぎる……」

担任が訳の解らないことを言った。