「おい清水」

背後からいきなり声が掛かった。


(ん!? おいとは何だ!)

そう思いながら振りかえると……

一瞬声を失った。


(やべー! ちょーイケメン!!)


其処に居たのは、濃紺のスーツにサラサラヘアの一見真面目そうな男性だった。

目鼻立ちはキリリとして、顎のラインはすっきりしてる。


まるでリクルートスーツモデルそのもの。

表情は堅く……
それでいて柔らかい……


(えっー!? 何なんだ此奴?)

その甘いマスクに私は戸惑いを隠せなかった。


カタログの表紙から抜け出したような清々しさは、私の鼓動を早くする。


目が点になる。
素直に格好いいと思った。




 「おい清水。なあ、どっかで会った事ねえか?」


(何だよー! ただのナンパか……。って……此処女子高なんだけど……。それに清水じゃねえし……。その上、いきなりおいときてる。アンタは一体何者なんだ?)


本当は……
胸がキュンキュンして、ドキドキが止まらない。

私はそれを悟られまいとして身構えた。




 「あのー、勘違いしてません? 私清水じゃ」

私が言おうとしたらその人は指先を足元に向けた。


「そのピンクのバレーシューズは?」

私は自分の上履きを見て愕然とした。


「あっ……シミズ……」

私は自分の隣のシューズボックスから、清水にさんの上履きを間違えて履いてきてしまったのだった。


思わずカーっとなる。
まるで頭から湯気が出ると言うか……
顔から火が吹き出ると言うか………


(やべー、きっとちょう顔真っ赤!?)


私は慌てて下駄箱入れに戻った。
顔に手を当ててみると、熱を帯びていた。




 でも幸いなことにまだ清水さんは来ていないようだった。


(やっぱり。やべーなー、どないしょー)


「はー。佐々木って言うんだ。俺は水野。教育実習生だ、宜しくな」

でも水野先生は普通に接してくれていた。