『てめえは子供の躾も満足に出来ねえのか!?』

父の罵声が飛ぶ。

私が万引きしたと正直に話した母に、父は最上級のイヤミも言った。

何て言ったのかは覚えていない。
でも、物凄く汚い言葉だった事は確かだ。


母にもう二度あんな思いはさせたくないと、思った位に父は見下したのだ。

私と母を……


きっと父は……
私を万引き犯に仕立てるために十円で何でも買えるなんて言ったんだ。

父なら遣りかねない。
と思った。

あの父なら……




 私は翌日又母とコンビニに行った。
それは私の潔白を証明するためだった。


『お父さんからお金を貰って、買い物に行ったの』
私は……
昨日の一部始終を母に語っていた。


『お父さんがそんな事言ったの? 綾を何だと思っているの?』
母はそう言いながら泣いていた。

私は母が解ってくれたと思っていた。

私は嬉しくなって、どんどん歩いていた。


『綾はお父さんの玩具じゃないのに』
母はそう呟いた。




 『はい、確かに昨日二十円ありましたが』
店員はそう言った。


『そうか。お父さんはその玩具を見ていないから、一つ十円だと思ったのか』
店員はそう言いながら私の頭を撫でてくれた。


でもそれで、私の万引き犯と言うレッテルが外れた訳ではない。
でも真実を知って欲しかったのだ。

私は万引きなんかする娘じゃないって知ってほしかったのだ。