三面鏡は過去を写す、タイムトラベラーの入り口なのだろうか?

だから母は、思い出に浸り泣いていたのだろうか?


『アナタは良くやっているよ』
そう言いながら、自分を慰め癒やす。
母のため息が聞こえてきそうだった。

きっと母も、この三面鏡の前で泣いたのだろう。

手垢で汚れた鏡面が、歴史を感じさせた。


母と同じように泣いていると、又父の嫌がらせを思い出した。

それは日曜日の午前……
それも相当早い時間だったと記憶している。




 朝の散歩を兼ねて、コンビニにパンを買いに行った時の事だった。

レジ前のテーブルに玩具が置いてあったんだ。
私は欲しくなって母にねだった。


母は首を振った。


『余計な物を買って帰るとお父さんに叱られるよ』
そう言いながら。

だから帰ってから父にねだったんだ。
その玩具が欲しいと。

その結果、父は買って来ても良いと言った。




 早速二人分のお金貰って、近所のお友達とそのコンビニに行った。


レジ前にお金を二十円置いて帰って来た。


そう……
父が渡したお金は二十円だったのだ。


『いいか綾、これがお金だよ。これ一枚で何でも買えるんだ。その玩具だって、何だって』

父はそう言った。
何度も何度も、十円玉一つだけで何でも買えることを強調した。


だから私は、お友達の分もと思い二枚貰って買いに行ったんだ。


やっと補助輪の取れた自転車に乗って、母と朝買い物に行った場所へ。