私が彼の誕生会を済ませて一旦家に戻り退学届けを提出して戻った時、水野先生も目を丸くさせた。


「やはり彼の傍にいたい」
そう言うとバグされた。


「よし。俺が何とかしてみせる。御前達全員、俺が勉強を見ることにする。でも清水、スパルタで行くから覚悟をしとけよ」

なんて言うから、私はあの雑誌を見せたんだ。


「うん、覚悟する。彼と一緒ならどんなことだって我慢出来るもん。でも水野先生……綾ちゃんにも、勿論それで行ってね」

そう言った後で綾ちゃんにも見せたことを打ち明けた。


(よし、これで大丈夫)

私は変な自信を感じていた。




 彼と祭壇の前に跪く。


「主よ……いま御前に立つ。まことと愛を分け合うため。主よ……いま二人を一つとなし、まこととしたまえこの誓いを……喜び悲しみ生きる限り。主よ……この二人を祝したまえ。愛する二人に溢れる喜び。造られた神をたたえて歌おう。互いに信じる心を実らせ、主の愛求めて正義に生きよう。試練の嵐に出会ったときこそ、互いに受け入れ、心を開こう。互いに引き裂く痛みの中でも、よみがえる愛を信じて祈ろう。ひとつのパンを分け合う二人は、心をあげつつ、主の愛歌おう」

どちらともなく結婚の誓いを読み上げ、そしてキスをした。


「早く二年が過ぎないかな」
私は彼の肩にに頬を寄せながら言った。


やっと会えた彼の苦悩を察すると胸の中は張り裂けさそうだった。
それと同時に彼に試練を与えた誘拐犯が憎くてたまらなくなった。


正当防衛で彼に殺されたその人をいい気味だとさえ思っていた。


でも彼はその人を本当の母だと信じていた。
だから苦しんだのだ。
その人に命を狙われたことが未だに信じられずにいたのだ。


その傷みを少しだけでも軽くしたくて歌を歌った。
それはあの、アメイジンググレイスだった。




 あの日彼は浜辺にいるおばさんを見つけ、無我夢中で駆け寄った。


砂浜に跪きその胸に顔を埋めた彼。
その頬には涙が溢れていた。

おばさんは彼の頭に手を置いて力の限りに抱き締めた。


夕焼けがまるで後光のように二人を浮かび上がらせる。
それはそれは美しい光景だった。


これからの人生。
きっと順風満帆ではないだろう。

嵐や日照りや雷もあるだろう。


でも大丈夫。
彼と一緒だったらどんな荒波もきっと乗り越えられる。


私達は勇気をもって漕ぎ始めた。
人生と言う大海原を……