翌日。私は水野先生の家を訪れていた。

私のサポートとして、清水さんも同席してくれることになった。


その家は、御殿のようだった。

どうやら水野先生の家は由緒正しい家系らしい。


緊張で胸が震える。
足も、膝と膝が小刻みに動いている。
私は玄関に入る前から限界だった。


(もうダメだ……)

目眩を起こしそうになり、清水さんに凭れ掛かった。


ふと、電車内の会話を思い出した。


『源氏って、凄い勢いだったんですね』

壇ノ浦の後の平家の衰退。

散り散りで逃げた人々。

そんなことをあれこれ想像していたら……


『実は俺の先祖は源氏側だったんらしいけどね』

そう言った、水野先生。


(あの時私は言葉を失ったんだ。先生は本物の王子様かも知れない……)

私は不安に怯えていた。




 エントランスは大理石らしい。
良く見ると、アンモナイトの化石もチラホラある。
私は益々緊張した。

靴を脱ごうとした。
でもみんなそのままで上がる。


(えっ!? 土足で良いの?)

私は慌てて学校指定の革靴の底を見た。
幸いなことに、余り汚れてはいなかった。


振り返ると門から庭一面に芝生があった。


(此処まで歩いて来る内に泥が落ちたのかな?)


そんなこと思いながら躊躇していたら、水野先生が優しくエスコートしてくれた。


「リラックス」
清水さんが小さなガッツポーズで応援してくれた。
私は深呼吸しながら、そっと二人に寄り添った。