「あーっ!? そうか、解った此処だー!!」

水野先生は突然立ち上がって震え出した。


「姫ー!!」

今度はそう言いながら泣き出した。


「姫を……、姫を殺さないでー!!」


(姫? もしかしたらあの夢の……)

私はどうする事も出来ずに、ただ水野先生を見守っていた。


(あれっ、今の言葉確か何処かで……)

私は何故か不思議な感覚にとらえられていた。




 「俺は……この川を流されていた。もがいても、もがいても岸に辿り着けなくて……」


「電車の中で見てた夢?」

私の質問に水野先生は頷いた。


「此処はもう無いんですよね? いつ頃ですか?」


「水が入ったのは丁度十年位前かな? 父はそのことを新聞で知って、その前に行ってます。確かその時に撮った写真が……」

伯母はそう言いながら、父のアルバムを持って来た。




 そのアルバムには、故郷と言うタイトルが付けられていた。


「此処です。間違いありません。この岩から川に落ちたのです」

祖父は故郷が水没する前にどうしても映像に残しておきたかったのだ。
その思いが、今水野先生へと辿り着いた。


(でもどうして!?)


「丁度十年位前からその夢を見始めたのです。でもずっと最近まで忘れていました。あんなに怖い夢、もう二度と見たくないと思っていたのですが」


(そうだ。確かに渋谷で叔父さんと会ってからだと先生は言っていた。きっと、叔父さんと何か関係があるのだろう)

私はそう思っていた。