アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】

 水野先生はやはり離島で教鞭を取ることになったそうだ。


「離島か? きっと時間がかかるんだろうな?」


「はい。此方からですと丸一日くらいはかかると思います。だから尚更、佐々木と離れて暮らせないと思いまして……」


「で、高校はあるんだろうな? 高校位は出してやらないとな……」

父の発言に水野先生は黙ってしまった。


「無いのか!?」

父は思わず声を荒げた。


「私が何とか対処致します。幸い、小中学校の資格も高校で教えられる資格もいただけました。後は文部科学省公認の資格で……」


「ああ、昔確か高校程度って言ってたヤツね」

何故か母が言った。


何故高卒の母がそのことを知っていたのかは判らないけど……

どうやらその方向で上手く流れて行きそうだった。




 どうせ田舎に来たのならと、伯母の家に寄せて貰うことになった。


でも伯母は怒った。
そりゃそうだ。
何の準備も出来ていない家に突然家族で押し掛けようと言うのだから。

それも私の彼氏付きで。


でも二つ返事で引き受けてくれることになった。



 「綾ちゃーん、待っていたよー」
玄関を開けた途端、伯母が台所から走って来た。


「見つかったよ、例のビデオ」

伯母はいの一番にそう言った。
私は意味が解らなくてキョトンとしていた。


「ホラ、ダムで沈んだお父さんの村のビデオよ。遺品の中に、昔放映されたのがあったの」

伯母さんは嬉しそうに言っていた。