アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】

 「違うよお父さん! 私の方から好きだと言ったの」

産婦人科医は、わだかまりの取れた親子の会話を笑顔で聞いていた。


「私が『初恋かい?』って聞いたら娘さんが頷いて」

産婦人科医が助け舟を出してくれた。


「だから水野先生は悪くないの」

私は産婦人科医に目配せをしながら会釈した。




 「佐々木の気持ちは嬉しかったけど、これからのことを考えると。だから暫く考えてみたのです。でもやはり……」

水野先生は深々と頭を下げた。


「お父さん、お母さん。佐々木を私にください。結婚させてください。これから先、どうなるのか見当はつきませんが、どうかお願い致します」


それはプロポーズだった。

紛れもない、私に対するる愛の形だった。




 水野先生は本気で言っていた。

でも私は戸惑った。

嬉しくて嬉しくて仕方ないのに、水野先生の言った源氏が引っかかっていた。


だって伯母さんが言っていたんだもん。

私達は平家の一門だと。
平清盛の子供の隠し子が先祖かも知れないと。


だから……
源氏側の水野先生とは、ロミオとジュリエットかも知れないんだ。

今時流行んないと解っている。
でも、怖い。
それを口実に……
又反対されるのではないかと思っていた。