「全くもう……」
私が玄関を閉めると、母は急に泣き出した。
「だったら、だったら綾を送ってやれば……」
母は私の体を抱き締めてくれた。
「私を送るとパチンコに遅れるからでしょう? 結局そんな程度なのよ」
私は言い放った。
「ごめんね綾。私が男の子を産めなかったから」
(――そうか……
母はこうやって自分をずっと卑下していたんだ。
――今日水野先生から聞いたよ。子供の性別を決めるのは、男性側の遺伝子なんだって。だからお母さんは悪くないよ)
さっき読んだ血液型の本の中にそう書いてあったようだ。
水野先生の出任せかも知れないけど……
私と父のDNAを調べるための材料集めが始まった。
母に真実は告げられない。
父が親子関係を疑っていることを悟られないためにも。
ヘビースモーカーだった父は、突然倒れて入院したことがあった。
原因は不明だった。
でも父は煙草だと思ったらしく、それ以来禁煙していたのだ。
メモにあった、煙草の吸い殻などある筈がなかった。
父がお風呂に入るのを確認して、こっそり寝室へ入った。
父の枕に付いた髪の毛数本をゲットして、ティシュペーパーに包んだ。
ダストボックスの中にティシュペーパーもあった。
でも、どれが父のか判る筈がない。
また、濡れたティシュを平気で掴む勇気もなかった。
偶々、テレビドラマを見ながら泣いている父を見た。
私はチャンスだと思い、父にそっとティシュペーパーを渡した。
(――鼻水より涙でしょう)
私は小さくガッツポーズをとった。
ファスナー付きビニール袋の上に名前を書き、集めた物を小分けにしたまま閉まった。
私の分は、血液だ。
痛くても、我慢しようと思った。
本当の血液型を調べて、真実を知るためにも。
私が玄関を閉めると、母は急に泣き出した。
「だったら、だったら綾を送ってやれば……」
母は私の体を抱き締めてくれた。
「私を送るとパチンコに遅れるからでしょう? 結局そんな程度なのよ」
私は言い放った。
「ごめんね綾。私が男の子を産めなかったから」
(――そうか……
母はこうやって自分をずっと卑下していたんだ。
――今日水野先生から聞いたよ。子供の性別を決めるのは、男性側の遺伝子なんだって。だからお母さんは悪くないよ)
さっき読んだ血液型の本の中にそう書いてあったようだ。
水野先生の出任せかも知れないけど……
私と父のDNAを調べるための材料集めが始まった。
母に真実は告げられない。
父が親子関係を疑っていることを悟られないためにも。
ヘビースモーカーだった父は、突然倒れて入院したことがあった。
原因は不明だった。
でも父は煙草だと思ったらしく、それ以来禁煙していたのだ。
メモにあった、煙草の吸い殻などある筈がなかった。
父がお風呂に入るのを確認して、こっそり寝室へ入った。
父の枕に付いた髪の毛数本をゲットして、ティシュペーパーに包んだ。
ダストボックスの中にティシュペーパーもあった。
でも、どれが父のか判る筈がない。
また、濡れたティシュを平気で掴む勇気もなかった。
偶々、テレビドラマを見ながら泣いている父を見た。
私はチャンスだと思い、父にそっとティシュペーパーを渡した。
(――鼻水より涙でしょう)
私は小さくガッツポーズをとった。
ファスナー付きビニール袋の上に名前を書き、集めた物を小分けにしたまま閉まった。
私の分は、血液だ。
痛くても、我慢しようと思った。
本当の血液型を調べて、真実を知るためにも。


