騒ぎを嗅ぎつけ、教師が何名か出て来た。
その中に水野先生もいた。


(――えっ、嘘!?)

一瞬声を失った。


「水野先生!」
でも次の瞬間。
私は思わず叫んでいた。

私を見つけると水野先生は、すぐに駆けつけて来てくれた。

雪に革靴がはまってしまうことさえ構わずに。

そして……
私の体に降り積もった雪を優しく払ってくれた。


「父が自転車で行けって言ったの。車を汚すのイヤみたいで」
私は泣きながら訴えた。

水野先生は、頷きながら聞いていた。


私はやっと警備員から解放された。

でも追い出し会の私の出番は始まっていた。




 「この子は今始まった劇の主役だったんですよ! どの位此処で止められていたのかは知らないけど、確実に間に合ったはずです。可哀相だとは思わないのですか?」

水野先生は警備員に意見してくれた。


「ありがとうございます先生」

そう言いながら私は泣いていた。


出し物はコントのシンデレラ。
私は主役のシンデレラだった。


そう……
又しても例のアミダクジで私は大役を射止めだった。

王子様は……
又しても清水さん。

体育祭の時は清水さんが抜けて、クリスマス会の時は私が抜けた。


アミダクジペアは迷コンビになったようだった。


でも私は水野先生の中に、本物の王子様を見つけていた。

私の王子様、清水さんには悪いけど……




 「シンデレラの演技は出来なかったけど、佐々木は本物のシンデレラになったな」
水野先生はしみじみと言った。

私はその言葉の意味が解らなくて、水野先生を見つめた。


「灰被りだ。シンデレラと言うのは、灰被りと言う意味なんだ。本当は、物凄く汚いと言う意味なんだ。今日の佐々木は間違いなくその灰被りだった」

その言葉を聞いた途端、お腹の底から悲しみが突き上げて来る。

私は遂に嗚咽を漏らし始めた。


折角の水野先生との再会が、汗塗れになってしまったからだった。