『愛してる』

黒鴉は、魔女にそう伝えた。
魔女はそれに、蔑むこともなく、黒鴉を抱き締める。
黒鴉は、初めての人の暖かさに戸惑った。

『私も、愛してるわ。
今まで、私を見てくれたのはあなただけだもの』

幼い少女の姿をした魔女は微笑み、黒鴉にキスを交わす。
この口に触れたものはなんなのか、確かめようとしたけどそれだけの知能をまだ持たない黒鴉には判らなかった。

『…エナ?』

黒鴉は見つめる、幼い魔女の姿を。
暖かい木洩れ日を映した赤茶色の長い髪、エメラルドを埋め込んだような深い翠色の眼を。

『…?どうかした?』

自分だけに見せる、眩しい笑顔。
そう、自分だけに…。
この魔女を、この少女をもっと自分のものにできたなら…。

『……ねぇ、なんなんだろうこの感情…。
分かんない…分からない…』

『ちょっと…クロス…?』

噛みたい…いや、喰いたい…。
この魔女を…自分だけの、ものに…。
そうだ…喰いたい…。

『好きなんだ…だから、食べていい…?』

それに、翠の瞳は一瞬だけ揺らぐ。
しかしまた、いつも通りの優しい笑顔で。

『いいよ…クロスなら、食べられてもいい…』

少しだけ色っぽく笑うその少女に、俺は食らいつくようにキスをした。

(……赤だ…エナの好きな薔薇みたいな、赤 …)

白が赤に染まり、夜空に深紅が映る。
綺麗だ…。
それに、おいしくて、気持ちよくて…。

取りつかれたように、柔らかい肉を喰らった。
壊れたように、その体を食い千切った。
後に戻れないと分かっていても、もう止まれなくて。
気付いた時には、少女だった魔女の肉しかなくて。

『ごめんね、エナ…』

まだ生暖かい体を、壊すように抱き締めた。