松崎さんが鞄を引っ張る。



「もーちょっといてもいいと思います。
鞄がまだ居たいって言ってます!」



どういう思考回路なのだろう。
思いもしない引き留め方に
思わず笑ってしまった。



「え、なんで笑うんですか」



当の本人は目を丸くしている。
だって、と私は笑った。



「今までされたことのない
引き留められ方だったので。
松崎さん面白いですね」



そう言うと松崎さんは笑顔になった。



「よくわかんないですけど
笑ってもらえたならよかったです。
統賀もたくさんお世話になっているし
もう少しちゃんと話せたらなあって
思ったんですよ」



松崎くんを見ると、彼も笑っていた。
本当にこのふたりはなかよしだなあ。
立ち上がった体をもう一度椅子に戻して
私はふたりの方に向き直った。