ふとした瞬間に
思い出とは蘇ってくるもので、
あおいがバツビルに行きたいと
言ったのをトリガーに
私は過去の余韻に浸っていた。



そういえばあれは7月、
過ごしやすいけれど
これからの暑さを予感させる夏の日だった。
そして、あれからひと月たたずして
彼はこの世からいなくなった。
あおいの誕生日の一週間前。
14年前の8月22日にこの世を去った
愛しいひとのこと、
片時も忘れたことはない。



思い出のバツビルから彼が
私の目の前から消えるまでの時間が
短すぎて、あえてこの13年間
バツビルに足を運ばないできた。



だけどそんな場所に私は今
最愛の妹に手を引かれながら
向かっている。