「ねえ、俺何かした?
最近冷たい気がしてさみしいよ」



距離を置く意識をしてひと月くらいが
経ったとき、郁也からそう言われた。



「別に」



郁也から目を逸らして言うと
郁也はそっか、と悲しそうに笑った。



「じゃあ、兄さんに頼みがあるんだ」



悲しそうな笑みは一瞬だけだった。
郁也は俺の心に踏み込まないことに
決めたらしい。
いつもどおりの笑顔で続けた。



「俺、兄さんとお店やりたい!
前から言ってたでしょ、俺。
お店をやったら前みたいに
たくさん喋ることだって出来るし、
何よりうち空き部屋多いじゃない。
広いこの玄関をお店にして
他の空き部屋に物を移動させれば
改装の手間もお金もかからないよ」