僕を止めてください 【小説】




「松田が苦しんでるなんて初めてだったわ。あいつはいつもスマートで、一見優しそうで実は冷酷に微笑んでる、みてぇのしか見たことなかったもんな。それをそんな風にさせたやつを見てみてぇって思うじゃね? で、頼まれて良く使ってたハプバーに行ったらお前がいたわけだ。でもあの時思った。“こいつにハマったら不幸だ”って」
「言われました。覚えてます」
「また二人でかわるがわる犯すのかって思ってたら、あいつ帰りやがった。ショックを俺にすら隠さねぇって、プライドの塊みてぇなあいつの普段から考えらんなかったわな。有り得ねぇ。ミイラ取りがミイラになるってやつだな。でも今ならあいつの気持ちがわかる。お前は死神みたいなとこあるな」
「死神ですか…僕は松田さんに悪魔って言われました」
「どっちも何か大事なものを奪ってくよな。お前だけ最初から満たされて、俺達はただ飢えるんだろ。お前がなにもくれないからか…違うな…俺達が欲張りなのか?」

 小島さんのセックスはいつもドSだが、時々それ以上にものすごく凶暴になる時があった。暴力もよく振るわれたが、凶暴になった時は鬼のようだった。それは僕のせいもあるし、嫌な記憶がそうさせているとも言った。何時間も責め続けられることもあった。それでも僕はイクことはなかった。凶暴になったあとは、小島さんは償うように優しかった。僕が中学3年になり、いままでの壁までの1年を切って、さらにそれはエスカレートした。小島さんは日に日にナーバスになっていった。僕の高校受験の準備も始まった。そんなある日にその出来事は起きた。