そうやって小島さんと僕は付き合うことになった。佳彦と始まった事件はこんな思いもしない方向に僕を運んでいった。僕と小島さんは似てない分だけ色々と考えさせられることが多かった。佳彦とでは多分わからなかっただろう普通の人の感覚を知った。
小島さんの家庭の事情も知った。小さい頃から親が仲が悪くて、中学生の時に父親が他に女の人を作って高校生になるころ出て行ってしまったこと、それ以来母子家庭で、高校の頃は少しグレてたこと。喧嘩が強くなりたくて空手の道場に通ってたこと。そこで自分がゲイだとわかったこと。家に居たくなくて、母親の負担になるのも嫌で、憧れもあって、高卒ですぐ寮に入れる自衛官に応募して就職したこと。そこですごく嫌な目にあったこと。でも可愛がってくれた上官は結局小島さんをかばってはくれなかった。それが一番キツかったこと。
「陸自の仕事は好きだったんだよな…俺、車とか機械いじんの好きだったし。空手やってたから格闘術の訓練も楽しかったしな。でも結局、それもたった一人の同僚が俺の生活と仕事を念入りに壊し続けてくれたせいで…だんだんそれまでとは違う自分に変わってきちまった気がするわ」



