「それなのにな…条件反射みてぇにお前に好かれたいって思っちまうんだよな。そうじゃねぇのが一番いいのによ。それが俺が耐えられればなんの問題もねぇっていうのにな」
そう言うと小島さんは両手を回して僕の肩を後ろから抱いた。
「でもさ…どっかで俺は期待してるんだ」
不意に胸の中に抱き寄せられる。頭の上に小島さんの大きい手が乗っている。僕はされるままになっていた。
「裕…お前が俺の限界を超えてくれるんじゃないかって」
急にギュッと小島さんの両腕が僕を強く抱きしめた。
「高校生になっても、大学に行っても、その先も…俺の気持ちが変わんねぇかも知れないって」
「僕が今のままで…ですか?」
「ああ…それでもいいって…それだから超えられることもあるかもなって」
「ほんとに実験したいのはそれですか?」
「…そうだな。実験か。はは…お前その実験に付き合うのか?」
「付き合えって言われたら」
「そうだったな」
小島さんは口をつけて僕の耳の中に囁いた。
「じゃあ…付き合え」
「ええ、わかりました」
「あー…おれが耐えられるまでな」
「はい」
手の中で飲みそびれてぬるくなっていくココアを膝の間に挟んだ。
泣かないのかな…僕は。それは僕にはわからなかった。



