誰かが来るまで、言われたように僕はベッドで仮眠することにした。豪勢で広いベッドに独りで仰向けに倒れて優雅な天井を眺めながら、さっきまで隣の部屋に寺岡さんと清水センセと『Sucidium cadavale』とあのDVDが揃っていたことが有り得ないことだと今更ながらに信じがたい気持ちでいた。時空がネジ曲がっている気さえする。変テコな夢を見ているようだった。
今ごろ二人はあの動画を観始めたのだろうか。寺岡さんに抱かれておいて良かった、と初めて思った。僕の裸も性器も発作も射精も痴態も全部見てる。羞恥心は消えないが、あの動画を最初に見せられた時よりもまだマシに思えた。僕が拒否したあの続きを見てくれているのだ。首を絞められて失神したあとの、僕の知らない佳彦の行為を。佳彦は僕に何をしていたのだろう。清水センセは知っているそれ。考えたところで分かるわけもない。考えるのをやめた。あの、ゾワゾワした虫唾が走る異様な不快さをもう感じたくない。
それより、久しぶりに寺岡さんに会い、慣れない場所に居るというのも相まって、だんだん自分が今どこにいるのかが曖昧になってくる。元々、自分が社会人になっていることが不思議だという認識が前提にあるので、本当はまだ中学生なのではないか、とか、実はただ長い夢を見ているだけなのではないか、とか、それ以前に、佳彦から犯されたことすら長い夢の始まりかも知れないとさえ感じる。こういう感覚を離人感と言うのかな?と思った。この前の清水センセの大混乱の電話のようだ。全部夢って言ってたな……それはこういう感覚なのではないか? 清水センセの言ったことを思い出してみる。
(……僕はまだ小学生のままで、今まで起きたことは全部僕の夢なんじゃないかって……母が死んだことも、大学に行って医者になったことも、君の動画で君を好きになったことも、アメリカに行ったことも、君に逢えたのも……全部夢だったのかも知れないって……)
思い出すうちに、今僕が感じているこの感覚が、清水センセのそれとほとんど似通っているような気がした。そうすると、僕は薬の離脱症状もないくせに、現実と乖離していることになる。それってもしかしてかなりピンチなのではないか? そうでなくても小さな裕が出てくる時は精神の危機で、乖離症状だと寺岡さんは言っていた。長い非常事態だ。長過ぎる。ほんとうに僕がそこから解放されることなんてあるんだろうか?
いつもの通り、現実から逃避するべくいつの間にか眠っていた。どれくらい寝たのだろう? 隣になにか違和感を感じ、寝ぼけた頭をひねって確認した。そして叫んだ。
「うわあっ!」
「俺だ俺だ! デカい声出すなよ、俺が驚く!」
「あ?え?ゆっゆっ幸村さん?!」
なぜか僕の隣に幸村さんが寝そべっていた。勢い後ろから抱きしめられる。
今ごろ二人はあの動画を観始めたのだろうか。寺岡さんに抱かれておいて良かった、と初めて思った。僕の裸も性器も発作も射精も痴態も全部見てる。羞恥心は消えないが、あの動画を最初に見せられた時よりもまだマシに思えた。僕が拒否したあの続きを見てくれているのだ。首を絞められて失神したあとの、僕の知らない佳彦の行為を。佳彦は僕に何をしていたのだろう。清水センセは知っているそれ。考えたところで分かるわけもない。考えるのをやめた。あの、ゾワゾワした虫唾が走る異様な不快さをもう感じたくない。
それより、久しぶりに寺岡さんに会い、慣れない場所に居るというのも相まって、だんだん自分が今どこにいるのかが曖昧になってくる。元々、自分が社会人になっていることが不思議だという認識が前提にあるので、本当はまだ中学生なのではないか、とか、実はただ長い夢を見ているだけなのではないか、とか、それ以前に、佳彦から犯されたことすら長い夢の始まりかも知れないとさえ感じる。こういう感覚を離人感と言うのかな?と思った。この前の清水センセの大混乱の電話のようだ。全部夢って言ってたな……それはこういう感覚なのではないか? 清水センセの言ったことを思い出してみる。
(……僕はまだ小学生のままで、今まで起きたことは全部僕の夢なんじゃないかって……母が死んだことも、大学に行って医者になったことも、君の動画で君を好きになったことも、アメリカに行ったことも、君に逢えたのも……全部夢だったのかも知れないって……)
思い出すうちに、今僕が感じているこの感覚が、清水センセのそれとほとんど似通っているような気がした。そうすると、僕は薬の離脱症状もないくせに、現実と乖離していることになる。それってもしかしてかなりピンチなのではないか? そうでなくても小さな裕が出てくる時は精神の危機で、乖離症状だと寺岡さんは言っていた。長い非常事態だ。長過ぎる。ほんとうに僕がそこから解放されることなんてあるんだろうか?
いつもの通り、現実から逃避するべくいつの間にか眠っていた。どれくらい寝たのだろう? 隣になにか違和感を感じ、寝ぼけた頭をひねって確認した。そして叫んだ。
「うわあっ!」
「俺だ俺だ! デカい声出すなよ、俺が驚く!」
「あ?え?ゆっゆっ幸村さん?!」
なぜか僕の隣に幸村さんが寝そべっていた。勢い後ろから抱きしめられる。



