(もしもし? 裕くん?)
「あ、先生、僕です」
(寺岡さんと会えた?)
「ええ、今ヌエヴォで話してます。清水センセのこと話したら、会ってみたいって寺岡さんがいうので、今から来れるかなぁと思って……」
(行くよ。すぐ行く。車だから10分くらいかな?)
「来たことありますか?」
(無いけど、ナビがあるから大丈夫。ヴィラ・ヌエヴォだっけ?)
寺岡さんが僕の背中を突ついた。
「ちょっと替わって」
「え、ああ、はい」
携帯を渡すと寺岡さんが通話をスピーカーにして僕の替わりに話し始めた。
「こんにちは、初めまして寺岡です。話は聞いてると思うけど」
(あっ! え? あ、しっ清水です! こちらこそ、お世話になります!)
「あぁ〜そんな緊張しないで下さい。あの、フロントで自分の名前言ってもらえます? それから寺岡に呼ばれたって言ってもらえれば、私がフロントに話し通しておきますから、係が部屋に案内するんで」
(あっはい。わかりました。10分か15分くらいで行きます)
「じゃ、お待ちしてます」
(はい! 失礼します)
世にも不思議な組み合わせの会話が終わり、僕は携帯を返されてもしばし呆然としていた。
「へぇ〜、一応フツーに話せるんだ」
「ええ、まぁ」
「どんな顔してるんだろ。楽しみだなぁ!」
10分は待つと案外長い。その間、寺岡さんは手慣れた様子でフロントに内線で『清水って人が来るからこちらに案内してね』と連絡した。
「最初から会う約束にしておけば良かったのに」
寺岡さんは簡単にそんなことを言う。何が起きるかわからないのに?
「ぶっつけ本番でしか言えないこともあります。彼のこと言えたのが奇跡みたいなもんですから」
「そうなんだ。まぁ、私がここに来るまで何日もやきもきしないで済んだのが良かったのか」
「あー、やきもきはしそうですね、あんな話ししちゃったら」
「うんうん、するねぇ、それは」
じゃあ、良かったのかぁ〜と言って、寺岡さんはハハと笑った。そして、清水先生が来たらコーヒー頼もうか? 彼、コーヒー好き? などとのん気に聞いてきた。僕をリラックスさせようとしてくれているのだろう。清水センセはコーヒーは好きなんだろう。毎日何杯も飲んでる記憶がある。寺岡さんはルームサービスのメニューを眺めている。ここのエスプレッソ美味しいんだよねぇ、とかなんとか。
15分くらいしたとき、部屋の電話が鳴った。寺岡さんが出る。
「着いたって。今から来るよ」
なにかの糸口が見つかるかも知れないという期待だけが僕の中で高まる。しかし、この出会いが吉と出るか凶と出るかは、今のところまったくわからなかった。
「あ、先生、僕です」
(寺岡さんと会えた?)
「ええ、今ヌエヴォで話してます。清水センセのこと話したら、会ってみたいって寺岡さんがいうので、今から来れるかなぁと思って……」
(行くよ。すぐ行く。車だから10分くらいかな?)
「来たことありますか?」
(無いけど、ナビがあるから大丈夫。ヴィラ・ヌエヴォだっけ?)
寺岡さんが僕の背中を突ついた。
「ちょっと替わって」
「え、ああ、はい」
携帯を渡すと寺岡さんが通話をスピーカーにして僕の替わりに話し始めた。
「こんにちは、初めまして寺岡です。話は聞いてると思うけど」
(あっ! え? あ、しっ清水です! こちらこそ、お世話になります!)
「あぁ〜そんな緊張しないで下さい。あの、フロントで自分の名前言ってもらえます? それから寺岡に呼ばれたって言ってもらえれば、私がフロントに話し通しておきますから、係が部屋に案内するんで」
(あっはい。わかりました。10分か15分くらいで行きます)
「じゃ、お待ちしてます」
(はい! 失礼します)
世にも不思議な組み合わせの会話が終わり、僕は携帯を返されてもしばし呆然としていた。
「へぇ〜、一応フツーに話せるんだ」
「ええ、まぁ」
「どんな顔してるんだろ。楽しみだなぁ!」
10分は待つと案外長い。その間、寺岡さんは手慣れた様子でフロントに内線で『清水って人が来るからこちらに案内してね』と連絡した。
「最初から会う約束にしておけば良かったのに」
寺岡さんは簡単にそんなことを言う。何が起きるかわからないのに?
「ぶっつけ本番でしか言えないこともあります。彼のこと言えたのが奇跡みたいなもんですから」
「そうなんだ。まぁ、私がここに来るまで何日もやきもきしないで済んだのが良かったのか」
「あー、やきもきはしそうですね、あんな話ししちゃったら」
「うんうん、するねぇ、それは」
じゃあ、良かったのかぁ〜と言って、寺岡さんはハハと笑った。そして、清水先生が来たらコーヒー頼もうか? 彼、コーヒー好き? などとのん気に聞いてきた。僕をリラックスさせようとしてくれているのだろう。清水センセはコーヒーは好きなんだろう。毎日何杯も飲んでる記憶がある。寺岡さんはルームサービスのメニューを眺めている。ここのエスプレッソ美味しいんだよねぇ、とかなんとか。
15分くらいしたとき、部屋の電話が鳴った。寺岡さんが出る。
「着いたって。今から来るよ」
なにかの糸口が見つかるかも知れないという期待だけが僕の中で高まる。しかし、この出会いが吉と出るか凶と出るかは、今のところまったくわからなかった。



