「じゃ、守れよ」
「死守する。絶対」
「今回清水さんに首絞めさせた罰で、今晩1回犯しとくか?」
「やめてよ……」
僕が泣きそうな声で拒否すると、幸村さんはマジな声で僕に言った。
「そのペナルティなら二度とお前はしくじんねぇよな?」
どんなふうになじられるより、そう言われるのが辛い。わかってて幸村さんは僕に釘を刺した。
「……ごめんなさい」
「抱きたいよ」
「ごめんなさい。もうしません」
「しろよ……抱けるから、お前のこと」
「もうしませんから!」
「あ、お呼びが来たわ。仕事戻るぞ」
「すみません。忙しいのに」
「良いんだよ。良い時間だった。今夜のオカズも出来たし」
「え」
「なんか行き詰まったらまた今日みたいに電話しろよ? いつでも抱いてやるから。じゃな」
「ちょ」
僕の非難を待たずに急に電話は切れた。僕は清水センセの眠るリビングに戻った。彼はまだ気持ち良さそうにうたた寝していた。僕はホッとして彼の向かいのソファに座り、ボーっと彼の寝顔を眺めていた。
(あ、寺岡さんのことを清水センセに説明できたこと、幸村さんに言いそびれた)
寺岡さんが来る前にまた話さなければならなくなった。その頃までには放火犯が捕まっていればいいのだが。どうやら借金関係がキッカケの事件になりそうだ。どこぞの反社のフロント企業の闇金が関わってるんだろう。きっと絵図を描いたヤツがいて、あの三人は脅されてやったとかに違いない。手口が巧妙になっている。犯罪者も日進月歩だ。
持ちこたえろという寺岡さんの言葉を噛み締めながら目を閉じると、このあとどうすれば良いのか考えた。幸村さんに事情を懺悔したせいもあって、少し頭の中が多少は冷えてきている。そうすると、一刻も早く自分の過去の謎を解明しなくてはという思いが強く甦ってきた。そういえば、これを清水センセだったらどう推理するのだろう? にわかにそのことが訊きたくなる。それとも、もう予想がついているのだろうか。そのためにもう一泊ここに泊まっても良いのか? それともやはり帰るべきなのか。



