夜中、携帯が小さい音で鳴った。あの日曜日から数日経った冷え込んだ夜だった。

「よぉ。起きてたのか」

 その声は、耳のすぐ側で聞こえてきた。距離がないみたいに。

「はい。起きてました」
「ちゃんと寝てるか」
「寝れたり、寝れなかったり、いろいろです」
「そうか。身体もういいのか?」
「痛いのはだいぶ治りました」
「ごめんよ。悪かったな」
「いえ、もういいです」
「怒んねーのか」
「怒ってないです。あの日も…怒ってはいないです」
「あんなに嫌がるお前、初めて見た」
「あんな痛いんですね。初めてです。小島さんはでも気持よかったんでしょ?」
「ああ止まんなくなった…血が出てたもんな…やり過ぎた」
「血見て興奮してたじゃないですか」
「ああ、そうだ。お前の血が俺のモノを染めてるのがさ」
「いいんですか」
「ああ…いまでも想い出すと勃ってくる」

 小島さんはフフと笑った。

「小島さん…僕はやっぱりどうしていいかわからないです」
「ああ…アレじゃダメだわな。生きてること受け入れろなんて…お前を抱く都合のいい言い訳程度にしかなんなかったわ。まぁなんだ、失敗だ。興奮したけど」
「違います。僕は…あの画像に抱かれてたってこと…言わなきゃって」
「知ってるよ」
「そう…ですか…」
「それでもいいかなって思えるか、どうか、それだけだ」
「そんなの…」
「お前が出来るんだから、俺にも出来るかもよ?」
「僕…?」
「永遠の片想い小僧だろ」
「片思いって言うのがよくわからないです」
「そうなんだろうな。だから出来るんであって、俺は片思いを知りながらそうしなきゃなんねぇ。アウェーだな」

 そう言うと小島さんも僕も二人で黙っていた。