「あ、え、眠れるかな。嬉しすぎて眠れないかも」
「寝られなかったら僕はソファで本でも読んでます。先生の本貸して下さい」
「どれでも読んでくれていいけど」
「じゃ、そういうことで。良かったです」
「なんで?」
「先生が疲労困憊だから、どのみち早く寝たほうが良いって思ってました」
「そっか……ありがと」
「もう、一旦話は終わりです。続きはまた起きたあとでします。早く寝ましょう」

 昨日に引き続き、今日も添い寝を要求された。神経の図太い幸村さんはグーグー眠ったが、清水センセは僕と一緒で眠れるのだろうか? 佐伯陸は僕と眠ると睡眠が深くなるとか言っていたが。なぜ僕は誰からも添い寝を要求されるのだろうか。
 二人で歯磨きをして、清水センセの寝室に行く。僕が避難させたメガネとほとんど手を付けずに冷たくなったコーヒーはテーブルに残ったまま。

「眠れるかどうかわかんないけど、一旦眠ったら多分朝まで起きないと思うんだ。いつもそうだから」
「睡眠薬飲むんですよね?」
「さすがにここまで疲れ切ってたら眠剤は要らないな。裕くんと一緒で興奮しちゃったら飲むよ」
「なら、最初から飲んでおいたほうが良いのでは?」
「え……だって……裕くんと一緒に寝るのに……もったいない」

 寝たいけど寝たくないということなのか。複雑である。

「なのでごめんね、もしお腹減ったらキッチンのシンクの下の引き出しにカップラーメンとかあるから」
「多分要らないです。気にしないで下さい。多分僕も爆睡します」
「まあ、好きにしてよ。なんでも好きに食べて、水もちゃんと飲んでね」

 清水センセはそう言いながら僕の枕を押し入れから出してベッドに放った。このベッドでは一度寝ている。寝心地が良かった気がする。良いマットを使ってるのだろう。僕が奥に寝るよと言って、清水センセは部屋の明かりを消した。替わりに足元の常夜灯がフッと点灯する。壁側に行って布団に入った。僕は戸惑いつつも手前の布団に入った。