ひっ……と清水センセの喉が鳴った。ネガティブになった清水センセが陥る自己否定のループを僕は敢えて自己中な主張でブチ切った。そうでもしなければこの人の堂々巡りは終わらない。僕には伝えなければならないことがある。だから。

「会って、話したいです。話さなきゃならないことがあります」

 数日前まで、それすら決められなかった自分とは思えないようなことを僕は告げた。

「この前、誰とも一緒にいられないってあんなに…」
「それは……すみません。あの時は僕はそう思ってました。でも、今は違うんです。なんと言ったら良いか……それもちゃんと説明しないと。ですから、色んな意味ですぐに会ったほうが良いんだと思います。すみません。言うことが前と変わってしまって」
「いいの?」
「ええ」
「でもさ、どうやって切り替えられるの?」
「なにをですか?」
「幸村さんの時間と、僕との時間を、さ」
「気になりますか」
「だって、裕くんってそんなに器用な人じゃないでしょ? 今朝まで一緒だったのに、同じ日に他の人間と会うなんて……」
「先生、僕は、好きと嫌いがいまだにわからない人間なんですよ。だから切り替える必要なんて、もともと無いんです。不器用どころの話じゃない」
「ほんとに?」
「ええ。だって僕はもともと屍体なんですよ? わかってるでしょう? 屍体に切り替えなんてないって。だから、居るだけで良いなら、今日も明日も先生と一緒に居ますから。屍体なので居るだけしか出来ないですけど」
 
 清水センセはこれで理解する。僕は確信を持ってそのことを告げた。

「そうだ。そうだね。ごめん、僕が間違ってた。裕くんのために、僕は受け入れるべきなんだね」

 ようやく彼は僕と会うことを承諾した。小さい裕は僕にもう悪魔の所業を求めていない。僕が全身全霊で真実を明らかにすることを望んでいるだけだ。そうであるなら、全人生を賭けて僕を殺してくれると言った人に、僕が出来るだけのことをしたいと思うのは当然だった。少なくとも清水センセは最悪の場合犯罪者になる可能性はあるが、僕を殺す前に死ぬことはないだろう。彼と一緒に居ても良い。彼が安らかならその方が良い。