「さあ、入れてやるぞ」
「うぐっ!」
また、固いモノを深く押し込まれる。またさっきのように大きな亀頭が気道を全部塞ぐ。5秒…10秒…頭を押さえつけられて、吐きそうになっても緩めることは出来ない。メガネが顔からずれる。でも、30秒、もう少しで酸欠が始まる。指先がかすかにしびれるような感覚がした。
抜かないで欲しい。もうこのまま終わらせて欲しい。そう思うと、僕の両手がいつの間にか隆の腰に縋りついていた。その途端、隆は僕の頭をつかみ僕の身体をまた引き剥がした。両手が虚しく空をかすめた。
「なんで…!」
僕は隆の顔を見上げた。いつも助けてくれたのに。これは生きることを受け入れる儀式なのか? でも、死の静寂を当たり前に享受していた頃、僕は死のうなどとは一瞬たりとも思わなかった。だから、そこに戻るだけで良いんだ。これじゃ隆は佳彦と同じだ。僕を屍体のまま抱くなんて、僕をおびき出す餌に過ぎないじゃないか。見上げた顔は笑っていた。欲しい物をちらつかせて取り上げるのを繰り返す隆は、とても楽しそうだった。
「もう…助けては…くれないんですね…」
なにかわからない悲しみが僕を襲った。涙が不意に溢れてきた。



