「それなら、オカルトじゃない。理にかなってる…」
「どういう……」
「いや、お前にそのつもりはないさ。少なくともお前は、勝手にみんな期待して屍体しか愛さない自分に近づいて、その気持ちに応えないから絶望して死に急ぎ始める、もしくは自分の中の死の力がそうさせる、そう思ってるんだろ?」
「ええ…ずっとそう言ってま…」
「司書はギリで逃げて、小島くんは詰めが甘くて失敗した…」
幸村さんは僕の返答など待っていなかった。考えが口に出ているだけの独り言のようだった。
「それは…」
「だが、二人とも直前まではまんまと思い通りになったってことだよな。これは巧妙なマインドコントロールなのか? そしたら、お前の罪悪感は、本物だってことなのか?」
鳥肌が立った。自問自答のように語られる幸村さんのその一言一言に戦慄が走った。
「俺は清水さんにお前を殺させない。でも、お前はそれじゃ、困る。さっきお前は言ってた。どんな風にどこがどう壊れてるかお前はひと目でわかるって。そうだとしたらさ、そいつの心のぶっ壊れてるとこなんて、もしかして手に取るようにわかるんじゃねーか?」
だんだん薄笑いになっていく幸村さんは怖ろしかった。頭の中が真っ白になった。否定しなくては。それなのにもう声が出ない。いや、否定できるのか、それを?
「俺はさっき、本当にこれでお前との肉体関係は終わって、お前の寝てる間に帰ろうって思ってた。最後を受け入れようって、本気で諦めようとした。そうしなきゃ、お前をいつかヤリ殺しちまいそうで恐ろしかった。それなのになんなんだ? お前は俺に『噛ませ犬じゃない』って言ったな」
そう言う幸村さんの薄笑いはすでに凍りついて、声が震えているような気すらした。
「俺が自分の心を叩き潰して自分で決めた終わりが、その一言でなし崩しになっちまいそうになった……そしたら……お前が死神をやめたら、お前が孤独の檻に自分を隔離するのをやめたら……俺はどうなっちまうんだ? なぁ……」



