身体が変わっている。こんなところで感じなかった。勝手に震えてる肩や膝を認めたくない。熱が上がっていく。僕がこの世でただひとつ嫌いだと思っているものが僕の中にある。そのたったひとつの嫌悪だけを頼りに隆は僕を責める。だがそれに気づいてしまった以上、隆はそれをとことん貪るだろう。僕を苦しませるために。それでも僕は隆の見せる画像から目を離せない。その快感に僕は手錠のようなもので繋がれている気がした。苦痛と快楽がせめぎ合ってる。2つは同じ質量を持っているかのように、互いを叩き合いながら凌駕することもなく絡みあう。同じように画像の生み出す陶酔と嫌悪もまた、同じものから発して2つに僕を分け合う。僕は2つに裂かれる。
「お前の身体…感じやすくなったな」
簡単に下半身を剥き出しにされる。隆にも容易にわかるほど僕の皮膚はこの世の感覚を感受するようになっていた。それは“他人”というものが現れて、その騒音を聞いているうちにシグナルを読み取れるようになっていることと関係しているような気がした。太ももの内側に滑らされた手の平に僕はわなないた。
「くうっ!」
「松田のせいでもねぇ。俺のせいでもねぇよ。お前の中にはこんなのが眠ってた。それだけだ」
「起こさなくても…僕はそのままで…良かった…!」
「そんな保証はねぇんだよ。この世ってのはそんな自分の好きにはなんねーんだよ。こうやって思いもかけないとこで自分の望みもしないことが起きるんだ。鉄の塊みてぇに炉に放り込まれて、ボコボコに叩かれて勝手に形を変えられてく。自分がどう抗おうとな」
そう言うと隆は片手で僕の手首の包帯を外し始めた。赤黒い短い傷口が顕わになった。
「小さいけど…深そうな傷だな。だけどお前を死なせはしない。そんな楽させねぇぞ。俺は嫌いなものに縛り付けられて悶え苦しむお前を嬲りたい。それをお前はやめられなくなるんだ。時間の問題だぜ…そんな身体になるまでな…」
隆はソファの上に画像を映したスマホを投げた。そしてソファに座りながら僕を引きずり上げ、自分の股間に僕の顔を押し付けた。ズボンの中のパンパンに張り詰めたものが僕の頬にグリグリと押し当てられた。



