「焦らしちゃダメって?」
「んあっ! んあぁぁっ!」

 えぐられるたびに声が出てしまう。あんなに萎えてたのに、こんな再燃させられるなんて。前もこんな風に煽られて犯されて射精してしまっていた。また今日もきっとそうなるんだろう。激しくないのに強烈な抽挿がゆっくり繰り返されて、僕の身体は再び興奮しきってしまっていた。僕の中を知ってる動きが急所を何度も襲う。腰が回ってしまう。またそれを両手で掴まれて押さえつけられる。苦しい、感じすぎて苦しい。止められた腰から上がくねる。背中が弓なりに反ると、突き出した乳首を舐められてひぃっ!と叫ばされた。

「こんな狂って、俺のモノで感じまくってるんだろ?」
「も…やぁだ……んあ!」
「これで…お前の首を絞めてやれたら…俺でもお前に気持ち良いって…言わせられるんだろうにな」

 絶対に言うはずのないことを幸村さんは呟き、不意に僕に笑いかけた。いつだったかこんな風に笑った人を見たことがある。

「先にイケよ。こんな張り詰めてるんだから…いつでもイッちゃうだろ?」

 心中した日の小島さんと同じようなことを言って幸村さんは泣きそうな顔で笑った。ああ、その顔はやめて。思い出してしまう…僕が死神だって。

「俺はイキたくねぇよ…イッたら終わっちまうだろ、今日って日がさ」
「ええ、逝かないで…逝っちゃダメだよ…」
「今更そんなエロいこと言うなよ…俺のこと好きかどうかもわかんないのに…」

 死にそうにもない人が死にそうな顔をする一瞬を見てしまったとき、僕はあの音がバスルームから響いてくるような気がした。消えない水の音。小島さん……死んじゃダメだ…小島さん……ごめんなさい……ごめんなさい……。僕は誰に抱かれてるんだろう。おとうさん? 小島さん? 幸村さん?

「ダメだよ…死んじゃ…ダメだよ……」
「なに言ってんだ。俺は死なねーよ」
「隆は…首を吊った…僕の首を絞めた後で…僕のせいなんだ…僕が…僕が!」
「お前のせいじゃねーんだよ! お前が、お前のほうが殺されかけたんだ。それに…それに…たとえ死のうとしていたって…そいつは幸せだったんだぞ? わかるか。わかんねぇんだろうよ、そいつや、俺の気持ちなんか、お前には!」

 さっきから再び緩んでいた涙腺がとうとう崩壊した。幸せなんて、そんなことあるか! 僕が悪い。僕が悪いんだ!

「そんなこと信じない! 絶対に…抱かれちゃダメだったのに…幸村さんがどんなに強引でも…僕がやめられたら…こんな事にはなんなかったのに…」