「僕、これを選ぶんですか。ツラいですね」
「へぇ、そんなふうに思ってんのか」
「幸村さんはどんな理由でも、僕がOKしたらそれでいいんですか?」
「どういうことだ?」
「僕にはあなたがたに非常な感謝があります。それを幸村さんには僕の身体で返す、ってことを理由にしてOKを出したら、幸村さんがそんな理由でも僕を抱きたいって思うのかなって」
「構わんさ」

 あっさりと幸村さんはなんのひねりもなくそう言った。

「……構わないんですか?」
「だいたい、お前が俺を好きだから抱いてくれなんてただの一回も言ったこと無ぇしな。今更お前の理由もクソもあるかよ。抱けるチャンスをくれるか、くれないか、それだけだろ。お前は好きとか嫌いで抱かれたり抱かれなかったり感じたり感じなかったりするようなタマじゃねーんだよ。欲情してれば誰でも良いんだろ?」
「ええ。間違いありません」
「じゃ、今までと何も変わんねぇ。変わったのは俺だ。なんにも期待をしないでお前を抱く。最初で最後にな」
「期待がないなら……それに越したことはありません。最後だって、約束してくれるなら」
「今さら期待なんか……出来るかよ。お前が今、欲情してなかったら俺はこんな質問もせずにさっさとここでお前を降ろして帰るわ。お前さ、いま自分がエロい顔してるの気がついてないだろ」
「え……そうなんですか?」
「抱かせろ。抱いてくれなんて言わんでも良いから。発作が治ったお礼に一発ヤラせてやるって言えよ」
「そんなんで良いんですか?」
「だから良いって言ってんだよさっきから! 話聞いてんのか? 俺はさっきから欲情したお前の顔と股間見てムラムラ来てんの! 俺だって勃ってんだよ……抜かせろよ。最後だろ。オナホ替わりにすればいいって、お前よく言うだろが」
「まあ、そうですが」
「じゃあ、イイな?」
「えっと……」

 幸村さんはそうは言うものの、僕のほうはさすがにすんなり、ええ、良いですよ、と躊躇なく言える気分ではなかった。どうしよう? 僕がセックスを望んでいるわけではないが、幸村さんに身体で感謝を顕すとなると、幸村さんは僕のことを『口じゃキレイ事言ってるけど、やっぱりこいつは心のどこかでセックスしたいんだ』とか勘違いされる気がする。言えば言うほどまた意味不明にツンデレ呼ばわりされるだろうし。それに、清水センセが許したとは言え、許したとしても内心嫉妬が煮えたぎってたりすることもあるし、それでまた狂気に拍車がかかっても困る。この選択は僕には難しすぎる。