「なにか問題でも?」
「またそれか。お前はなにかを疑問に感じることはないのかよ」
「さあ…」
「淋しいって思ったことくらいあるだろ。オヤジと遊びたいとか、ホントにただの一度も思わなかったのか?」
「ないです」
「生きてるから?」
「はい。そのとおりです」
「お前さ、ほんとにその親、お前の本当の親か?」
「ええ、多分」
「多分て…」
「言われたことないし、尋ねたことがないから可能性としてそれは理論的にはありますよね」
「一回聞いてみろ」
「なんでですか?」
「お前が変だからだよ!」
小島さんはイラッとしたみたいに即答した。また変だと言われる。松田さんにも言われた気がした。
「つまりホントの親に育てられないと僕みたいになるってことですかね」
「可能性はあるよな」
「変じゃ…まずいですかね? 僕、自分が変だと思ってなかったんで」
「…マズいってか、お前が不便だろ実際。これから生きてく上でよ」
「そうですか?」
「そうだろ」
思えばちょっと前まではまったく不便じゃなかった。こんな目に遭うとは予想もしていなかったのだ。
「…確かに今、不便ですね。自分が生きてる違和感で気が狂いそうになるなんて」
「生きてることを受け入れろよ。生まれたからにはそれが基本なんだよ」
「受け入れたらこの違和感はなくなるんでしょうか?」
「なくなるかもな」
「受け入れるって、どうやればいいんですか?」
「どう…やる?」
「受け入れるって、どういうことなんですか?」
小島さんはそれを聞くと黙り込んだ。考えているようだった。



