それから僕達はなぜか、最もエコロジーな埋葬方法について話し合った。樹木葬、海への散骨、鳥葬、好きなものへの知識量がそれなりに拮抗しているので、互いの思考の穴を指摘しながら話が進んでいく。まぁ、墓地で話すこととしては極めて理想的だろう。
「…鳥葬は日本のどこで可能かってことだよ。衛生的なこと考えるとさ」
「少なくとも、チベットではあの高地で屍体が腐りにくいから行えてるんでしょうし。高地で屍体が腐りにくいから土葬が地域性に合わないわけですから」
「日本の山間部では現実的にどうだろうね。地中で腐敗するから土葬だったんでしょ。だいたい日本に屍体を完食してくれるような猛禽類っていたっけ?」
「確かに猛禽類はもっと増やさないとですね。でも増やせばネズミやカラスやヒヨドリの害は副次的に解消されて、ある意味一石二鳥な気もしないではないです」
「鳥からついばまれた屍体の潰乱の様子は割と好きなんだけどな。腐敗していくより好感度は高いよ」
「多分、合理性で言えば鳥よりバクテリアや細菌の腐敗のスピードを上げて、コンポスト化するのが一番なんですよ」
「それ、シアトルでマジで法制化されるんだってよ。『ナチュラルでオーガニックな還元』って。君の理想が将に実現されるってことだよ。森林の育成に使用されるって話だから」
「本当ですか!? 良いですね。アメリカ人って合理性を実現できるのが本当に羨ましいです」
「評価高いね! 君のナチュラリスト的な発想の源が知りたいよ」
九相図が嫌いな清水センセが苦笑した。ナチュラリストVS.アーティストの論戦になってきそうだ。
「エンバーミングの防腐剤も土壌汚染の原因になってるらしいですし」
「それはアメリカで結構問題視されてた。だから最近はホルマリンを使わないエンバーミング保全液ってのが開発されてる。とにかく土葬は減り続けてるね。それでスウェーデンじゃあフリーズドライ葬ってのが開発されたみたい。液体窒素で凍結粉砕だって」
「寒い国の発想ですね。ところで液体窒素ってどうやって製造するんでしょうかね? そこで過剰な電力とか使ってたら余り意味が無いですけど」
「環境問題でよくある矛盾ってやつだね。電気自動車のバッテリー製造時のCO2の排出量が、ガソリン車の製造時より大きくなるってアレね。それと、コンポスト葬と違ってこちらの埋葬後の遺体は、土中で完全に分解されるまでに数十年かかるらしいから、まだ改良が必要かと思うね」
「とにかく死んだら食物連鎖の輪に入りたいって思います。コンポスト葬は現実的で良いですね。それだけのためにアメリカに移住したいくらいです。でも英語が死ぬほど苦手なんでどうすればいいんでしょうかね。面倒なんでいっそサバンナでハイエナとかライオンに食われたいですよ。僕はシンプルが一番だと思うんで」
「それは現代社会で最も贅沢な死に方だよ、裕くん」
「まぁ、それは知ってます」
それを聞いて清水センセは意外そうな顔で僕の顔を見た。



