「俺はそんなオカルト信じねぇぞ。そんなのはよくある偶然だわ。お前と松田の趣味は違うよ。だけどな、それが科学的な証拠になんかなんねぇんだよ。お前らは手っ取り早い結論が欲しかっただけだろ。松田はよ、好きだけどお前と噛みあわねぇその隙間を埋める理由が欲しかったんだよ。お前はウザくて恨みつらみのある松田を振りほどくキッカケが欲しかっただけだろ! 違うかよ! え?」
「それは…確かに科学的じゃないって思います…けど…」
身体を無理やりねじられて、声がかすれた。
「妄想っていうんだよ! そういうのを! お前は松田を思い出してよがり狂いたいだけなんだろ? 結局お前は振ったはずの松田が忘れらんねーんだろ?」
「違いま…す……痛…い」
「うるせぇ。松田思い出してよがるお前の尻拭いか、俺は? いい面の皮だな。俺は優しいだと? ふざけんな! クソっ!!」
小島さんはその勢いで、僕の身体を髪を掴んだまま横向けに引き倒した。
「あの時死なせりゃ良かったわ。いや、死ぬなよ。その身体で一生苦しめ。人生はな、辛くて苦しいのがデフォルトなんだよ。お前だけが安らかなんてこと、あるわけねーだろ!」
小島さんが僕の喉元を片手で押さえる。苦しい。頸動脈じゃない。気道を押されて咳き込む。
「じゃ…じゃあ…小島さんも…苦しいんで…すか」
「そうだよ! 俺は自分を試して結局苦しくてキレてんじゃねーかよ! 俺はバカか?」
そう言うと小島さんは僕の両手を顔の横で押さえつけた。手首の包帯の上から容赦なく体重がかかる。傷口が痛かった。



