僕を止めてください 【小説】





「心中って、書いてあったのか? 説明かなんかに」
「佳彦の貸してくれた本のこと、電話で話しましたよね」
「ああ、自殺のな。お前それで自殺の写真で欲情するようになっちゃったんだろ?」
「はい。そうです。でも写真の中で、2枚だけ全然そそらない写真があって」
「それは電話で聞いてねぇなぁ」
「話してないかも知れません。2枚だけ、他殺だったんです」
「え…?」
「それがどこかの国の警察署の資料室の自殺のカテゴリーにあったんです。犯人が殺人を自殺として偽装して、バレなかったから」
「おい、ちょっと待てよ。なんかそういう自殺じゃねぇ証拠とかが写ってたのかよ」
「いえ、実際のことはわかりません。僕が勝手に感じるだけなんです」
「なんだそれ」
「でも、その2枚、佳彦が好きなんです。他のどの写真よりも」

 小島さんの身体が一瞬固まったのがわかった。

「…なんだよ…それ」
「小島さんもさっき言ってましたよね。松田さんは生きてるものの命を奪うのが好きだって」
「あ…ああ」
「佳彦、ピンポイントにその2枚がそそるって言ったんです。それまで僕、その2枚のこと記憶にないくらい他の写真が良くて、忘れてた。でも、最後にあった時に一緒に写真集を見て、それを言われて初めてわかった。なんで僕が興味が薄かったかって」
「…わかるのか…お前ら」

 小島さんは呆然とした声でそう言った。